山本弘『妖魔夜行 戦慄のミレニアム』上・下、角川スニーカー文庫、2000年(isbn:4044152152、isbn:4044152160)

 山本弘は、いまや、「と学会会長」という肩書きがもっともとおりがいいんだろうけど、小説家としてもかなり質の高い作品を書いている。『ラプラスの魔』(isbn:4044601100)、『時の果てのフェブラリー』(isbn:4199050353)、ついでに『ギャラクシートリッパー美葉』(isbn:4044601062)、最近だと『神は沈黙せず』(isbn:4048734792)もすばらしい出来。そういえば、bookアサヒのインタビューで、乙一が『ジェライラの鎧』に影響を受けたと書いていたな(http://book.asahi.com/authors/index.php?ppno=2&key=27)。

 さて、小説家・山本弘の魅力は、なんといってもオタク的な、異常に追求された設定や論理の面白さにあり、それに一度はまってしまうと、少し陳腐かもしれないキャラクター造形やストーリーには目をつぶれてしまう(笑)。
 本作もそんな山本の魅力が遺憾なく発揮されている。原聖書・テスラ・ジェネレーター・波動関数・新天使などなど。
 しかも神々や悪魔などビッグネームが入り乱れる派手なストーリーもかなりの高水準なエンターテイメントとして完成している。
 癖がある作家であろうし、TRPGの設定を使っていることもあり、なかなか人に薦めにくい。だが、もしなじむことに成功したならば、最高に楽しい読書になると思う。★★★★★。