椎名誠『活字のサーカス 面白本大追跡』岩波新書、1987年(ISBN:4004203899)。

 様々な本を切り口としたエッセイ集。
 友人から、椎名誠は面白いよ、と薦められていたのだが、何から読み始めて良いのか、いまいちわからず、これまで読んだことがなかった。前にも書いたことがあるような気がするが、私は引っ込み思案のシャイな人間なので、これまで読んだことがない作者との「出会い」には少しだけ気を使うことにしている。人間と同じで、本も作者も第一印象が大きい。第一印象が悪いと、その後はなるべくおつきあいしたくないと思ってしまう。折角ならば、なるべくいい第一印象にしたいから、ある作者の本を始めて読むときは、出来るだけ代表作・面白いと言われている本を、面白く読めそうなシチュエーションで読もうとしている。
 などと気構えていると、なかなか読むきっかけがつかめなくなる。椎名誠もそういう作者の一人だったが、バイト先に転がっていたので現実逃避がてらに読んでみました。現実逃避というのは、シチュエーションの中では最高ランクというか、かなり面白く読めてしまうもの。今回もそのとおりとなって、するすると一冊読み終えてしまいました*1

 さて、感想ですが、随分と素朴なエッセイを書く人だなと認識。旅の話や日常の思ったことと、本の話題を結びつけるタイプの短いエッセイを集めたスタイルなのだが、旅や日常で「思う」ことの素直さにびっくり。観察したことを素直に素朴に描くようなタッチとでもいいましょうか。役人の融通のきかなさに素直に起こったり、清田君(だっけ?超能力少年。本書では少年としか表記されていない)の超能力を「うわあこれは本物なのだ!」と直感してしまったり。たまに、おいおいそれでいいのかよ、とも思ったが、読ませる力があるのだから、素晴らしいのではないでしょうか。少なくとも、大いに私の現実逃避の手助けをしたのは確か。かなりピンチです。

★★★★☆。

*1:ちなみに読んでいる最中に以前も椎名誠のエッセイを読んだことがあるのを思い出しました(笑)。新疆を旅する話だったな。