筒井康隆『薬菜飯店』新潮文庫、1992年(ISBN:4101171289)。

 短編集です。僕は基本的には、筒井は長編のほうが好きなのですが、でも一番好きな作品は表題作の「薬菜飯店」だったりします。
 不思議な料理店に迷い込んだ主人公が、体を治すという数々の料理を食べて、癒されていくというストーリー。
 ストーリーはそれだけなのですが、描写が秀逸。さすがに読んでいるだけでは体は治らないが、気分は本当に爽快になります!
文章でどれだけ人の感覚に訴えかけられるかという挑戦なのでしょうが、もう脱帽するしかありません。
 マンガだと、JOJOのレストラン、王様はロバの耳掻きの話なんかが思い浮かぶけど、正直「薬菜飯店」の力には勝てないかな。ともかく、筒井の文章力に感嘆するばかりです。
 「蟹光癬」(『宇宙衛生博覧会』新潮文庫、1982年所収。isbn:4101171157)という短編もすごい文章力を見せつける作品なのですが、そちらは人を気持ち悪くさせる方向に向いているため、しゃれ抜きでつらい。グロは平気という方はそちらもどうぞ。
 ★★★★★。