金城一紀『FLY, DADDY,FLY 』講談社、2003年(isbn:4062116995)。

 金城一紀は、『GO』(ISBN:4062736837)でブレイクした作家。わかりやすい青春や熱さを書くのが、特徴と言えるかもしれない。わかりやすいというのは、新作を読んでもどこかで同じような話を読んだことがあるような気になる、と言い換えてもいい。これは批判ではない。「ありがちなだけに、皆が持っているツボ」をきちんと押してくれるのであり、むしろ正しいエンターテイメントである証左とも言える。
 主人公は、平凡なサラリーマン。インターハイ・レベルのボクサーに殴られた娘の敵を討つため、特訓して戦いに挑むという筋書き。そのありふれた熱いストーリーに、脇を固めるキャラクターの魅力(『レボリューション No.3』(ISBN:406210783X)と同じ登場人物。こちらもおすすめ)。ロッキー、ブルース・リーマトリックスからの熱い引用。思わずにやっとしてしまう。興奮させられる。
 腐っている時に読み返すには、最高の本です。
 ★★★★☆。