佐藤哲也『熱帯』文藝春秋、2004年(isbn:4163232400)。

 読破。
 すごい引力がある。一気に読んでしまった。昔の高橋源一郎を読みやすくしたような感じのお話で、それだけに、ストーリーを説明してもあまり意味がないというべきだろう。文体だったり、細かなエピソードがそれぞれ猛烈に面白いのだ、とでもとりあえず言っておきます。
 とここまで書いて、どう感想をかけばいいのか、悩む。
 

暑くてむしむしして不快指数うなぎのぼりの東京を舞台に、情報システム改修プロジェクト、謎の省庁「不明省」(「気をつけろ、そいつは部長もどきだ!」)、愛国的気候論を主張するテロリスト、CIAとKGBのスパイ、水棲人、暑いときに食べると大変うまかろうと思われる料理のレシピ(韓国風冷やし中華とかガスパッチョとか)、哲学的テレビ番組「プラトン・ファイト」「弁証戦隊ヘーゲリアン」などが入り混じってホメロス風味に展開される物語。おもしろかったです。反復は笑いの要諦なり。

 
 あー、大体僕が思ったことが書いてあるかも。これに、「gekka blog」(http://ore.to/%7Egekka/000481.html)さんを足すと完璧というか。

 自分の表現力のなさに軽く絶望しつつ、かなり面白い小説にあたったことに喜びつつ、日記を終えます。★★★★☆。