斉藤貴男『安心のファシズム 支配されたがる人びと』岩波新書、2004年。安心のファシズム―支配されたがる人びと (岩波新書)作者: 斎藤貴男出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2004/07/21メディア: 新書購入: 3人 クリック: 37回この商品を含むブログ (70件) を見る

 グローバリズムの中、アメリカの「衛星プチ帝国」である日本において、安心と快適さを提供するIT技術と結びついたファシズムが育ちつつある――。

 ってな感じの新書。
 いろんなテーマをとりあげているんで、ちょっと目次を紹介。
 
第一章 イラク人質事件と銃後の思想
第二章 自動改札機と携帯電話
第三章 自由からの逃走(心のノート)
第四章 監視カメラの心理学
第五章 社会ダーウィニズム服従の論理
第六章 安心のファシズム(まとめ)

 タイトルから話題がわからない章については、私がカッコ内に補足しました。
 
 見てわかるとおり、情報技術絡みでいろんなテーマをとりあげている。だからざっと見て糸口にするのはいいけど、それぞれのテーマへの掘り下げはいまいち。
 つーか、みっちり取材して書いたと言うよりも、雑誌・新聞・本・論文をさらさらと引用して書いていて、内容があまり濃くないのが不満。

 また、「安心と快適を供給する情報技術」に人びとが吸い寄せられ、全体社会化へ―ファシズムへとつながっていくことをひたすら指摘しているのだけれども、それらは全部拒否できるものではなくて、どういう作法や線の引き方が必要かというところが問題のはず。自分がデジタル・グッズ好きで、まさに「快適なIT」に吸い寄せられているからかもしれないけど、そういう社会にどうルールを作るか、どう個人的に対策をするか、みたいな話にして欲しかった。指摘で終わってしまって、その先がないところも不満。

 こういう話に今までまったく興味がなくて、上記の章立てを見ても、話の内容がさっぱり検討がつかないという人には、糸口として読む価値はあるだろうけど、ある程度の関心がある人にはあまり意味のある本ではないかも。

★★★☆☆。