高橋秀実『からくり民主主義』草思社、2002年。からくり民主主義作者: 高橋秀実出版社/メーカー: 草思社発売日: 2002/06メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 30回この商品を含むブログ (47件) を見る

 いろんな書評で絶賛されていましたよね。ようやく読めました。

 統一教会諫早湾干拓問題、沖縄米軍基地問題などのルポを集めたもの。マスコミでは、わかりやすい二項対立の構図で説明されているものが、実はそうでもないよ。というスタンスが全編を貫く。
 沖縄問題だと、反戦地主はごくわずかであり、彼らの運動を通じて、毎年の土地の貸借料の値上げ圧力がかけられるだとか。敵対しているはずの関係が相補的であったりするわけです。

 「マスコミ提供のわかりやすい構図」が受け入れられない。つーか、嘘がある。
 こういう感覚は、最近じゃ、かなり広く共有されているような。だから、著者のスタンスは結構みんなわかるんだようなと思う。
 ただ、その感覚が強すぎて、どうにもこうにも撞着的関係を見つけなければ気が済まなくなっているのでは。「車椅子バスケット」のエピソードなんかは、特にそう感じたなぁ。
 手放しでこの著者の視角に、同一化はしたくない。そうも思ったわけで。

原発・沖縄・宗教・環境などの社会問題を、実際の現場を歩いてレポートする。マスコミが伝える単純化された図式ではなく、戦後民主主義の生み出した歪みを浮き彫りにした異色作。

 帯のあおり文章。草思社はタイトルやあおり文章が、面白いものが多い。時には、内容よりも面白いときも…。優秀な編集者さんがいるんでしょうね。
 ただ、高橋が取り上げた問題は、「戦後民主主義の生み出した歪み」なの? それこそ、誰かが作り上げた言説でないのかしらん、と思ったので、引用した次第。

★★★★☆。