千里単騎を走る(千里走単騎)

 チャン・イーモウ監督、高倉健主演。
 
 10年前、妻の死をきっかけに、息子と仲違いした健さん。で、それで嫌になったのか、東京を離れ(仕事も辞め?)、どっかの漁村で漁師をしておりました。

 で、いまごろどうにか仲直りできないかという思いがわき、病床の息子に会いに行くのですが、息子はかたくなに拒否。しかし、息子の仕事が中国の仮面劇の研究であり、また今年も雲南省麗江に訊ねて予定であったことを知り、代わりに健さんが訊ね、その劇を撮影しようと決意する――

 で、事前に見かけた紹介だと、「中国への旅を経て、息子の思いを理解していく」みたいな感じの説明でございました。中国着いたばかりの健さんはまさしくそんな感じで、中国語が出来ないうえに、コミュニケートする方法がさっぱりわからないため、ガイドに「お願いします」とぼそぼそいって金を渡すだけ。で、遭遇した事物をすべて息子と関連づけて考えるばかりで、体は麗江にいても、見ているのは息子だけという状態。正直見ていていらいらした。
 ついでにいうと、息子は東大の中国仮面劇研究者で、麗江に半年滞在したりと調査経験も豊富らしいのですが、なんとまったく中国語が出来ず、中国人の友人もいないのだとか。日がな一日山を見ていたりしたらしい。国費で調査に行ったんだろ!金返せ、とかちと叫びそうになりました。
 麗江に行っても麗江が見えない、という点で父と息子の心は出会うのかい、とちと鬱に。
 
 ところがところが。
 劇を演じる役者さんが監獄に入っているため、骨を折って監獄までいったり。役者さんが彼の息子を思うあまり気持ちが高ぶってしまい劇を演じられないので、役者さんに一目息子を見せてやろうと探しにいったり。と、ガイドに金払って旅するだけじゃ済まない問題にぶち当たる中、健さんは否応なく旅先の人・事物を見ることを余儀なくされていく。息子のためにはじめた旅だったわけですが、外界から隔絶することを選んだ健さんが再び世界へとつながるための旅になったのでありました。
 健さん自身が最後にそれに気づいたのだと示唆されるわけですが、そこいらでもうぐーっと来ました。って、おいらの自己体験を強引に映画にかぶせているだけかもしれないけど。


 麗江の景色は非常に美しい。一回旅行に行ったけど、また行きたくなりました。あれだけでもステキだな、と。

 ★★★★★。