林譲治『記憶汚染』ハヤカワ文庫JA、2003年(isbn:4150307407)。

 近未来、世界中どこでもネットがつながり、すんごい個人用コンピュータで…、というありがちな高度管理社会ディストピア
 弥生の遺跡から出土した、わずか200年前の粘土版。「非線形」コンピュータ・ネビロスの奇怪な作動…。とばたばたと謎が膨れていく。
 なんかいろんな要素が組み込んであるんだけど、結構ありがちなものばかり。決定的に辛いのは詰め込まれた要素やら、キャラクターの行動やらがうまくつながっておらず、違和感ばりばりなこと。リアリティを感じさせないというか。「非線形」とか「構造主義」とかほとんど使う必要がないように見えるのですが、なぜそういう単語を詰め込んだのだろうか。
 記憶と歴史の不確定性というのがテーマなので、不整合があってもそれもまた因果とか整合性とか正しい歴史とやらにとらわれた迷妄ということでしょうか(苦笑)。
 次々登場する新たな話題につっこみ入れながら読んだので、さくさくと読み終えましたが、後半にかけて加速度的にダメになっていくので、読後感はかなり厳しいです。★★☆☆☆。