こうの史代『夕凪の街 桜の国』双葉社、2004年(isbn:4575297445)。

 平成16年度文化庁メディア芸術祭賞の受賞マンガ。
 優秀賞を見ると(http://plaza.bunka.go.jp/festival/sakuhin/sakuhin/manga01.html)、なんとなく説教臭そうなタイトルが過半。『毎日かあさん』(ISBN:462077054X)が異色です(西原理恵子の身分上昇が見事に成功しているのが喜ばしい)。
 候補作に、『鋼の錬金術師』(ISBN:4797328606)があったりもしたけど、お国のお墨付きはもらえなかった模様。「国富」には一番貢献していると思われるのにね。

 んでもって、このマンガ自体が、説教臭い、つまらないマンガかというと、そうでもない。
 敗戦の10年後を舞台にある女の子の恋を描いた「夕凪の街」と、現在を舞台にして子供時代のなんとないわだかまりと今への不満や不安が解き放たれる物語の「桜の国」1・2によって構成されているが、ストーリーの組み立ても技巧的で、恋心や人がぽっくり死ぬという無常感の描写も引き込まれるものがあり。叙情描写好きな人にはおすすめです。★★★★☆。