東谷暁『エコノミストは信用できるか』文春新書、2003年。エコノミストは信用できるか (文春新書)作者: 東谷暁出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2003/11/20メディア: 新書購入: 1人 クリック: 40回この商品を含むブログ (22件) を見る

 ここ十年間の日本経済の停滞は、同時にエコノミスト市場の空前の繁栄の時代だった。それは、株価という数字を、「市場の声」に仕立てあげる「声の市場」の繁栄の時代……。

 とか、あおり文句を書くとすごい面白そうじゃないすか。自分もまた、出版当初から気になっていました。「新書本を買わない主義」時代だったので、図書館で借りられるようになるのを待って、結局二年以上も読まず今頃読んでいるわけですが。

 で、実際はどうだったかというと……。

 微妙。

 個々のエコノミスト自身の言葉で語らせるという方針の下、バブル・財政出動・ITなどのテ−マごとに章を建てて、そのテーマについてのエコノミストの言及を引用している。その構成が散漫な印象を与えているのは否めない。ひとつのテ−マについては掘り下げが少なく言葉足らずであり、個々のエコノミストがどう活動しているかについては、つかみづらい。
 経済政策そのものを語るのではなく、またひとりのエコノミストをとりあげるのではなく、エコノミストがどう消費されているのかをとりあげる、というのは、ニーズがあるテーマだと思う。ならば、その構造自体をもっと描いて欲しかった。たとえば、著者は「経済評論家評論家」を名乗っているので、経済評論家を軸に据えた分析であるとか、ね。

 まあ、経済には不勉強だが、エコノミストの人に踊らされる現在日本に興味がある、という私の期待に沿うような構成ではなかったというだけかもしれないが。
 ただタイトルからすれば、自分のような興味を持つ読者が第一に想定できるのではないかしら、と思うのだが……。って、勝手な想像か。

 自分も含めて、なにかこうカラッとした、すっきり解決を求める甘えた心性がいかに危険か、それで食っている人たちがいますよ、ということは再確認。読む前からわかっていたことだけれども。

★★★☆☆。