ジェイムズ・P. ホーガン『内なる宇宙』上・下、創元SF文庫、1997年。内なる宇宙〈上〉 (創元SF文庫)作者: ジェイムズ・P・ホーガン,James P. Hogan,池央耿出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1997/08/29メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 43回この商品を含むブログ (48件) を見る内なる宇宙〈下〉 (創元SF文庫)作者: ジェイムズ・P.ホーガン,James P. Hogan,池央耿出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1997/08/29メディア: 文庫購入

 ガニメデ三部作の4作目? です。
 
 1作目を頂点にパワーダウンを重ねていたので、あまり気が進まなかったのですが、とりあえず読むだけ…と思い、読みました、よ。

 で、まず感じたのは怒り。前作で降伏させたジュブレン人の統治がうまくいかない、というのがストーリーの起点になるわけですが、どうみてもジュブレン人がアジア人っぽいんだよね。肌の色が橙だし。で、ジュブレン人はコンピュータ・ネットワークの仮想現実に耽って、やる気がないのが問題だといって、行政官が基幹インフラであるネットワークを停止してしまうの。なんやねん、そのおせっかいっぷりは。植民地に文明をもたらす帝国主義者ですな。
 で、ジュブレンの混乱は「地球軍の投入」で解決されるのは間違いないのだけれども、ジュブレンに同情を感じている行政官は、それをためらうわけ。まず軍の投入が解決になることには疑いを持っていない。で、それ以外の解決策として、行政官のプライベートな人的関係に頼って解決を図るし。行政チームに、ジュブレン人入っていないし。
 メリケン許さまじ、の念を強くしました(笑)。
 で、そういう怒りを除いてみると、前半は三作目をさらにダメにしたような、冗長さで死にそうになる。でも、後半の「内なる宇宙」の謎が明らかになりだしてからはかなりひきこまれました! ストーリーと人物描写のダメさ加減と「内なる宇宙」アイディアの楽しさとで、長所と短所がともに際だっている感じ。

 整理すると、
 
◆短所
・キャラクターが魅力的ではない上に、ハント、ダンチェッカーといった主要人物の性格も変わっているような気が…。
・ストーリー、たるい。ちょっとご都合主義。

◆長所
・ネタバレになるから詳しくは書かないけど、「内なる宇宙」アイディアが面白い。仮想世界が実在する、というロジックは秀逸だと思う。

 って感じでしょうか。SF的外連味に騙されたい人は楽しく読めるけど…。といった感じなのかしらん。

★★★★☆。