サイモン・シン(青木 薫 訳)『暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで』新潮社、2001年。暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2001/07/31メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 230回この商品を含むブログ (241件) を見る

◆目次
第Ⅰ章 スコットランド女王メアリーの暗号
第Ⅱ章 解読不能の暗号
第Ⅲ章 暗号機の誕生
第Ⅳ章 エニグマの解読
第Ⅴ章 言葉の壁
第Ⅵ章 アリスとボブは鍵を公開する
第Ⅶ章 プリティー・グッド・プライバシー
第Ⅷ章 未来への量子ジャンプ
付録 暗号に挑戦−一万ポンドへの十段階


 言わずとしれた大傑作『フェルマーの最終定理ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで』のサイモン・シンの著書。『フェルマーの最終定理』も読んで燃えましたっ。
 にも関わらず、『暗号解読』は4年ほど放っておいたのですが…。

 で、読んでみると、やっぱり面白いっ。おそらくはよく知られているエピソードの寄せ集めなんだろうけど、その見せ方とかかみ砕き方が絶品。

 例えば、冒頭。
 スコットランド女王メアリー。彼女が処刑されるか、否か。それは暗号が解読されたか否かにかかっていた…。とぐっと熱いスタートで始めつつ、話を古代からの暗号技術の解説へと持っていき、メアリーにつなげていく。
 途中の解説もひじょーにわかりやすい。
 
 んでもって、つかんだハートを離さないまま、中世・近代の天才・奇人・変人たちによる暗号作成・解読の進化を、ぐわわっと解説していく。この、面白いキャラに光を当てながら技術の進化史を概観する手法は『フェルマー』と同じね。こなれています。

 で、ドイツの暗号機エニグマの解読をめぐる壮絶なバトル。米軍のナヴァホ族を使った暗号、ヒエロクリフ・線文字Bといった考古学の話題、公開鍵の発見、PGP、量子暗号と話を進めていき、政府の安全保障と人びと・ビジネスのプライバシー・セキュリティーといった今日的課題、現代世界の焦点としての暗号という位置付けも明確にっ!

 山盛りの天才たちの戦いぶりも楽しいし、暗号作成の進化。んでもって、それをやぶるための智恵も、感動するしかありませんっ。

 たんのーしました、よ。
 
 ★★★★★。

*どうでもいいけど、英語のサブタイトルは、「How to Make It, Break It, Hack It, Crack It」。「ロゼッタストーンから量子暗号まで」というサブタイトルは内容の核心を外していていまいちだと思うんですが。