高崎宗司『植民地朝鮮の日本人』岩波新書、2002年。植民地朝鮮の日本人 (岩波新書 新赤版 (790))作者: 高崎宗司出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2002/05/20メディア: 新書購入: 1人 クリック: 26回この商品を含むブログ (7件) を見る

 朝鮮開港から45年の日本敗戦までの期間、朝鮮に居住していた日本人の姿を描く。公文書、日本人会などの民間組織の史料、個人の回顧録などを渉猟して、朝鮮の各地域や様々なトピックの事例を拾い上げている。*1

 問題意識は、「名もない人びとの「草の根の侵略」」を明らかにしたいとのこと。
 金貸し→土地獲得、という手段がよく使われていたこと。日本人であることから朝鮮の役人を威喝するなどして、密輸など不正な生業を営んだものもいたこと。保護国化以降、蔑視や差別が強まったことの具体的な事例が興味深い。

 ただ、朝鮮に居住した日本人の「草の根の侵略」に関連する部分を拾い上げようとするあまり、その他の部分が取り上げられていなかったことは残念。塚瀬進『満州の日本人』のような、植民地朝鮮に居住した日本人の総合的な像も描いてもらえればもっと良かったと思う。資料的には出来そうな気もするのだけど、そうすると開港から敗戦というスパンを取れないから絞ったのだろうか。

 ちょっと面白かった点として、日本商人対清国商人のトピック。保護国化以前はやはり日本の商人は清国の商人に完敗だった模様。『満州の日本人』でもそういうエピソードがあったな。どちらも日本国家の武力的優越とお上に頼ってどうにか商売になったということ。なんとなく現在とかぶってみてしまうよなぁ。

*1:併合までは地域重視。それ以降はトピック重視という傾向が。序盤は新たに日本人が住む地域が出来ていくということで地域ごとに取り上げたのかな。そのスタイルを貫いたほうが良かったと思う。後半はトピックつまみぐいという印象を少し受ける。