鈴木孝昌『現代中国の禁書 民主、性、反日』講談社+α新書、2005年。

◆目次
中国当局も恐れる反日の仕掛け人「愛国者同盟網」
売国奴の汚名を着た親日評論家「対日関係新思考」 
9億農民のために闘う 「中国農民調査」
SARS禍から人類を救った解放軍医師 蒋彦永
体制の変革者か堕落した娼婦か「私の性愛日記」
毛沢東の再来を許すな 元毛沢東秘書 李鋭
共産党専政に挑む確信犯 「討伐中宣部」
迷走する胡錦濤の言論政策

 装丁を見ただけで、最近腐るほどある中国叩き本かなと思い、手を取らなかった一冊。講談社+α新書って真っ黄色の表紙でなんか安っぽくないですか。講談社は学術新書もリニューアルして原色バリバリの安っぽい色になりましたが、「今の新書戦争においてはこれぐらい目立たないと勝ち目がないんじゃっ」という熱い叫びなのかしらん。

 で、先日、電車に乗るときに読む本がないので、なんとなく購入。これがなにげに読みやすく面白い。近年、中国政府に発禁処分にされた論者をインタビュー。それを並べることで、今の中国の像がすっと見えてくるという仕掛け。扱われているトピックは上の目次の通りで、対日関係、メディア・体制批判が中心。性の話は、木子美の一章だけ。

 どれも強力なメディアコントロールスケープゴートの作り方なんかがよくわかるし、そういう中国を変えようとする熱い人びとの存在も知ることが出来る。

 印象的な点として二点。
・発禁にされた著者たちが異口同音に言うのは「昔なら出版できない。一時的とはいえ出版できたのは大きな変化。これからも(おそらくいい方向に)中国は変わっていく」というもの。まあ、彼らには、文革天安門の記憶がぬぐいがたく刻まれているはずであって、そこから考えれば変化しているということ。なにげに忘れてしまいそうなことだけど、これは抑えておくべきことなんだろう。
・彼らの体制批判の文言に、たびたび「日本」が悪い実例として出てくること。「日本兵のように扉を蹴破り押し入ってくる」とか「日本の文科省教科書検定=歴史歪曲と一緒だ」みたいな感じで。そも「対日関係新思考」の馬立誠を除いて、出てくる人間はみな民族主義をかかげている。他の国の歴史も一緒だけど、圧政からの解放・民主要求と民族主義が結びつくのはありがちなお話。それだけに中国政府も気にしているのでしょうが…。そうなると、日本=悪いことのシンボルという構図が存在する限り、中国の民主化運動の進展と反日感情の高まりはセットになる可能性があるのかなー、と。

 ★★★★☆。